遺言書で認知症の家族に財産を残す場合の注意点!
「認知症の家族にも自分の財産をきちんと残してあげたい」
このように考えて遺言書を作成する方もいらっしゃいます。
認知症の方であっても、もちろん相続人になることはできますし、遺言によって財産を残すこともできます。
ただし、実際に相続が発生した後の財産の管理や手続きまで考えておくことが大切です。
今回は認知症のご家族に財産を残す場合に遺言書を作成するときの注意点についてご紹介します。
「認知症だから財産を残せない」ということではありません
まず知っておきたいのは認知症であることと、相続人として財産を取得できることは別の問題だということです。
例えば、
「長男には自宅を相続させ、認知症の妻には預貯金を相続させる」
といった遺言を作成することも考えられます。
大切なのは相続人の現在の状況だけではなく、財産を取得した後、その財産をどのように管理していくのかまで考えておくことです。
1.財産を残した後の管理方法を考える
認知症の方に預貯金や不動産などの財産を残した場合、その後の管理が問題になることがあります。
例えば、預貯金を相続したものの本人が財産管理や契約などを一人で行うことが難しい場合です。
認知症などによって判断能力が十分でない方については、成年後見制度によって財産管理や各種手続を支援する仕組みがあります。成年後見制度には法定後見制度のほか、判断能力が十分なうちに将来に備える任意後見制度があります。
そのため、遺言書を作成するときには、
「財産を残す」だけでなく、
「その財産を誰がどのように管理するのか」
という点まで考えておくことが重要です。
2.遺産分割協議が必要になる内容か確認する
遺言書がない場合、相続人の間で遺産分割協議を行うことがあります。
しかし、認知症などによって判断能力が十分でない相続人がいる場合、その方自身が遺産分割協議を行うことが難しい場合があります。
成年後見制度はこうした遺産分割協議などの法律行為を支援するためにも利用されています。
一方、遺言によって財産の取得者が定められている場合、その遺言の対象となった財産については、遺産分割協議を行わずに手続きを進められる場合があります。家庭裁判所もすでに遺言によって取得者が決まっている遺産については、原則として遺産分割調停の対象にならないと案内しています。
そのため認知症の相続人がいる場合には、「どの財産を誰に相続させるのか」を遺言書で明確にしておくことが重要な検討事項になります。
3.「認知症だから少なくてよい」とは限りません
遺言書を作るときに注意したいのが、
「認知症だから財産は少なくてもよいだろう」
と安易に考えないことです。
認知症の方であっても相続人としての権利があります。
例えば、他の相続人に財産を集中させる内容の遺言を作成する場合には、遺留分についても確認しておく必要があります。
遺言によって遺留分を侵害されたと考える相続人は、一定の場合に遺留分侵害額を請求することができます。家庭裁判所にも遺留分侵害額請求の調停手続があります。
そのため、
「認知症の妻には少しだけ残して残りは長男へ」
といった内容を考える場合には、財産全体を整理した上で慎重に検討する必要があります。
4.不動産を残す場合は特に注意する
預貯金だけでなく自宅や土地などの不動産を認知症の家族に相続させる場合には、さらに注意が必要です。
例えば、
「認知症の妻に自宅を相続させる」
という遺言を作ったとします。
妻がその後も自宅で生活するのであれば問題が少ない場合もありますが、施設への入所などによって自宅を売却する必要が生じることもあります。
その場合、本人の判断能力の状況によっては、売却などの手続きについて成年後見制度の利用が問題になることがあります。
したがって、不動産を残す場合には、
「その人がその不動産を将来どのように利用するのか」
まで考えておくことが大切です。
5.「誰に残すか」だけでなく「何のために残すか」を考える
認知症の家族に財産を残す場合には、
「相続させる財産を何にするか」
だけでなく、
「その財産を何のために使ってほしいのか」
を考えておくことも大切です。
例えば、
「妻が今後も安心して生活できるように預貯金を残したい」
「介護施設の費用など将来必要となる生活費に充ててほしい」
というように財産を残す目的を整理しておくことです。
こうした考えを遺言書の付言事項などで家族に伝えておく方法もあります。
ただし、付言事項は基本的に法的な財産処分そのものではありませんので、実際にどの財産を誰に取得させるのかという内容は遺言の本文で明確にしておくことが大切です。
6.遺言執行者についても考えておく
認知症の相続人がいる場合には、遺言執行者を誰にするのかについても検討しておくとよいでしょう。
財産の種類が多い場合や相続人が複数いる場合、相続手続きが複雑になる場合には、遺言執行者が手続きを進めることで家族の負担を軽減できることがあります。
特に、
「認知症の妻に預貯金を残す」
「長男には不動産を相続させる」
など複数の財産について異なる指定をする場合には、あらかじめ遺言執行者についても考えておくと安心です。
7.遺言書だけでなく家族の将来まで考える
認知症の家族に財産を残す場合、本当に重要なのは、
「相続させること」だけではありません。
その後、
「誰が生活を支えるのか」
「財産を誰が管理するのか」
「自宅をどうするのか」
「介護や施設入所の費用をどうするのか」
といった問題も出てくる可能性があります。
そのため、遺言書を作成するときには、現在の家族関係だけでなく、将来の生活や財産管理まで含めて考えておくことが大切です。
まとめ
認知症の家族にももちろん財産を残すことはできます。
ただし、
相続後の財産管理をどうするか
遺産分割協議が必要になる内容か
遺留分について問題がないか
不動産を残す場合、その後どう利用するのか
遺言執行者を指定する必要があるか
といった点について、あらかじめ考えておくことが重要です。
特に、
「認知症の家族に財産を残したい」
という場合は、「誰に何を相続させるか」だけでなく、
「その財産を相続した後、その人が安心して生活できるのか」
という視点から遺言書を考えてみましょう。
市川市の倉元行政書士事務所では、遺言書作成のご相談に際して、ご家族の状況や財産内容を整理しながら、必要に応じて司法書士・税理士などの専門家と連携してサポートしています。
「認知症の家族に財産を残したいが、どのような遺言にすればよいのか分からない」という段階でもお気軽にご相談ください。
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